
この論文では高周波ブロードバンド・ワイヤレス・アプリケーション用単一アンテナを使用して、複数の狭ビームを提供する斬新な方法を紹介します。この方法では、パッシブ・ビームフォーミング・ネットワークをビーム整形回路と共に使用して、サイドローブ・レベルを隣接するビームに低減します。ビームフォーミング・ネットワークでのソフトウェアの複雑さは、パッシブ・マイクロ波コンポーネントと伝送ラインを使用することによって解消されます。このデザインは無線周波数(RF)段でのビームフォーミング・ネットワークを、信号の劣化や複数ビーム内での干渉なしに実装するのに役立ちます。マルチビーム・アンテナ・システムは、ユーザ容量とスループットを増加させると同時に、より高いサービス品質とスペクトル効率を提供します。
SDMA(space division mutiple access:空間分割多元接続)概念を使用したマルチビーム・アンテナは、制限付きスペクトルとユーザ容量の問題を解決する上での画期的な成果です。大きな技術的変更なしで、制限された周波数スペクトルにおいて高い容量を提供します。[1]SDMAは、使用可能なスペクトルを効率よく利用するために、ほとんどのワイヤレス・サービス・プロバイダが実装しています。ただし、SDMAは通常は360度のカバレッジで、3つのセクタに制限されます。1本のマルチビーム・アンテナ・システムを使用して、セクタ数を最大48まで増やすことができます。その結果、このシステムはサービスの質を向上させながら加入者数を増やすことができます。これは、ビームフォーミング・ネットワークの周波数再使用および干渉緩和能力によって可能になります。
このシステムはデータ、音声、およびビデオ信号を、中継局なしで、複数の方向に、長い距離にわたって送信することができます。その結果、コストが削減され、可読性、品質、および加入者数がすべて大幅に増加します。短距離(低ゲイン)の無指向性アンテナではなく、この長距離(高ゲイン)狭ビーム指向性アンテナが使用されます。通常、長距離アンテナでは単一方向の加入者数が増加することになります。しかし、それ以外のすべての方向にある加入者はシステムを使用できません。提案したシステムはマルチビーム手法を用いてこの問題を解決しました。マルチビーム手法では、全方向における加入者の大幅増加と全方向アンテナの球状カバレッジを実現可能な高ゲイン・アンテナを同時に、または順番に再使用することができます。容量のさらなる増加は、周波数再使用手法で達成できます。
マルチビーム・システムは、フェーズドアレイ・アンテナとETインダストリー社 (ETI)が開発した独自のOptibeamビームフォーマ・ネットワークを利用するハードウェア・ソリューションです。ソフトウェア・プログラムと外部電源が不要なため、厳しい環境でより堅牢になります。本論文の残りの部分は、次の構成になっています。セクションIIでは、マルチビーム・アンテナの設計を詳細に説明しています。ビームフォーマ設計については、セクションIIIで解説しています。セクションIVは、マルチビーム・アンテナ・システムの性能結果、セクションVは応用分野を示します。最後に、セクションVIで結論を述べています。
提案したマルチビーム・アンテナ・システムの主要コンポーネントは、アンテナとビームフォーミング・ネットワークです。アンテナは、ダイポールやパッチ・アンテナなど、1つのアレイになるように配置された小型アンテナ・エレメントで構成されます。ビームフォーマは、さまざまな方向にビームを生成するために、すべてのアンテナ・エレメントに所要位相を提供します。両方のコンポーネントのデザイン・パラメータは、等しく重要であり、ここでより詳しく説明します。
提案したシステムのアンテナは、アレイ・エレメントとしてパッチ・アンテナを使用します。パッチ・アンテナは、マイクロストリップ・プリント回路テクノロジに基づきます。パッチ・エレメントを使用する利点は、コンパクトなサイズ、低い製造コスト、軽重量、据付が簡単、高信頼性です。各エレメントには放射方向に応じて、異なる振幅と位相が供給されます。エレメントは遠距離場において異なる位相と組み合わせて、狭ビームを形成します。当社のアンテナは、等しいエレメント間の間隔と漸進的移相を持つリニア・フェーズド・アレイとして設計されています。[2] [3].
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各エレメントの間隔は中心周波数でλ/2になるよう維持されます。フィード・ポイントはパッチの中心線になるように選択されます。ただし、正確な位置は入力反射測定の実験結果によって決定されます。フィード・ポイントのほかに、パッチの形状も電圧定在波比(VSWR)が1.5未満になるように、注意深く選択されます。我々はフィード・ポイントを、目的動作範囲でより高い性能が得られる中心点よりもわずかに高くなる位置に選択しました。パッチ・エレメントのその他のデザイン・パラメータは、左記のとおりです。(左記、表を参照) 多数のパッチ・アンテナが15度の方位ビーム幅および7度の垂直ビーム幅を得るために、1つの誘電体基板上に直線的に配置されます。4ビーム・アンテナの設計では、最低4つのパッチ・エレメントのアレイが必要です。[4]アンテナのゲインは26 dBで、フロント対バックの比率が30 dB以上、サイドローブ・レベルはメイン・ローブよりも20 dB低くなります。4ビーム・アンテナ・システムの性能は、ベクトル・ネットワーク・アナライザを使用して確認され、結果は図1に示されます。アンテナの動作範囲は、3.2〜4.2 GHz、VSWRは1.5未満です。 |

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ビームフォーマは、パッシブ・マイクロ波コンポーネントで構成される複雑なネットワークで、アンテナとトランシーバ間のRFエネルギーに必要な位相および振幅を供給するのに使用されます。アンテナ・アレイのビームフォーミング・ネットワークは、ビームを先鋭化し、方向を機械的な動きなしで電気的に誘導します。ビームフォーマは、タイム・ドメインまたは周波数ドメイン解析を実施して設計されます。この論文では、ブロードバンド・アプリケーション用の周波数ドメイン・ビームフォーミング・ネットワークを選択しました。 |
RF信号損失を抑え、位相や振幅などの信号特性を維持するために、ビームフォーマはアンテナ近辺に配置するか、アンテナ・アセンブリに一体化されます。現在の例では、ビームフォーマはアンテナ近辺に配置され、アレイの位相は位相整合ケーブルを使用して維持されます(図2参照)。これらの位相整合ケーブルの確度は±1°です。ケーブルの長さは36インチになるように選択され、挿入損失は0.5 dB未満です。
この例では、ビームフォーマは、60度セクタで4つのビームを生成するのに必要な位相要件を満たすために、直交カップラ、マイクロ波ハイブリッド、位相シフタを組み合わせて設計されています。完全対称の90度ハイブリッド・ジャンクションを必要な位相重付けを作成するためのベクトル加法に利用できます。ハイブリッドは、固有のインピーダンス変換を利用して統合し、それによって使用する整合トランスを減らすことにより挿入損失を低減します。4ビーム・アンテナ・ビームフォーマは、3.4〜3.6 GHzバンドで動作するように設計されています。性能は、Agilent U3042Aマルチポート試験装置にAgilent N5230Aネットワーク・アナライザを接続して、3.4〜3.6 GHzの範囲で測定されます。図3、4、5に、代表的な8ビーム・ビームフォーマの結果を示します。

マルチビーム・アンテナの放射パターンは、3.4〜3.6 GHzの周波数範囲のオープン環境で測定されます。ビームフォーマは、位相整合RFケーブルを使用してアンテナに接続されます。ビームフォーマ入力には4種類の中心周波数が供給され、それぞれ1本の7 MHz幅チャネルを持っています。これらの周波数は3.440、3.480、3.520、および3.580 GHzです。入力RFパワーは5 dBmで、受信パワーはスペクトラム・アナライザを使用して200 mの距離で測定されます。受信信号パワーは、4ビーム・アンテナを中心として半径200 mで描画した円上で、2.5度ごとに測定されます。実際の放射パターンを図7に示します。また、MATLABシミュレーションを使用した理論放射パターンも図6に示します。

前セクションでの解析は、このような6本のアンテナを配置して、ワイヤレス通信用に360度のカバレッジを提供できることを示しています。このマルチビーム・アンテナ・システムの潜在的な用途が、WiMAX (Worldwide Interoperability for Microwave Access)ネットワークおよびセルラー・ネットワークでの使用です。このシステムはユーザ容量とスペクトル効率を大幅に向上させます。
空間分割多重アクセスに基づくマルチビーム・アンテナ・システムは、周波数の再使用によってネットワーク容量とスループットを増加させます。アンテナとビームフォーマの設計パラメータを詳細に説明します。システム全体の性能は、屋外環境で検証され、MATLABでシミュレーションされた理論的な結果と比較されます。上記の結果から、実験結果はマルチビーム・アンテナ・システムの設計および理論計算に適合していることが明らかです。